さくら月夜



第三章 伝言


Show must go on!!

儚げで雅な琴の調べのって光一が歌い踊る。

月夜ノ物語

今日のダンスはいつもに増して色香漂うセクシーさだった.。

ここ数年、彼の成長は目覚しく、成熟した大人の色気がそこかしこに溢れていた。

気のせい?やっぱり座席の位置かしら?

その日、さくらは何度となく光一の視線が自分に向かっているのを感じていたが

それが座席のいたずらなのか、単なる偶然か、それとも思い込みの勘違いか…思いあぐねていた。

あ…まただ

♪揺らめく〜僕はもっと〜感じた〜♪

険しく切ない表情で光一が指を刺した

えっ?私?






入口でチケットを見せると、係員が後方のカウンターに向かって目配せしたように見えた。

「失礼ですが、伊藤さまですか?」

別の若い女性係員がさくらに声を掛けてきた。

「はい。そうですが?」

「伝言を承っております。」

「公演終了後は、客席右側の一番前方にあるドアから出てください…とのことでございます。」

「えっ?どういうことですか?」

さくらは意味が分からず聞き返したが

「申し訳ございません。それだけお伝えするように…とのことでしたので。」

「そうですか。あの…どなたが?」

「多分…事務所の方だと思いますが?もうよろしいでしょうか?」

「あ…すみません。ありがとうございました。」





そんなやり取りがあったから、何か意図的なものを感じずにはいられなかったのかもしれない。








[PR]動画