今…思い出すのは 君の手のぬくもりだけ もう二度と帰れない あの時には… |
冷たい指先 |
街中が目も眩むほどのイルミネーションに彩られるこの季節… 誰もが幸せそうな笑顔を振りまいて俺の横を通り過ぎて行く。 「ごめ〜ん。待った?」 「ん…ちょっとだけな」 待ち合わせに少し遅れて来た未来が白い息を弾ませながら俺の手を取る。 「手…冷たいよ。ほんとは随分待ったんでしょ?」 「そうでもないで?俺、冷え性やもんしゃーないやん。」 ちょっとおどけて答えると 「かして」 未来が俺の両手を自分の方に引き寄せる。 「ええって!」 引っ込めようとする俺の手を無理矢理に引き寄せると、両手で包み込む。 「よくないよ。私が待たせたせいだもん。」 はぁはぁ息をかけたり擦ったり…必死やねん。 そんな未来が愛しくて… 彼女の右手を掴むと、そのまま俺のコートのポケットに突っ込んだ。 「え?!」 普段は絶対しない俺の行動に、未来が驚いて大きく目を見開いとったっけなぁ。 「手…あったかいな」 我ながらくさいセリフに苦笑ながら、ポケットの中では更に指を絡める。 「は・恥ずかしいよ」 「ほな、離そか?」 「やだっ」 未来が頬を赤く膨らませて、キュッと腕にしがみついてくる。 「ほら、行くで」 照れ隠しにちょっとばかし睨んでみたけど全然効果なしや… 「ねぇねぇ、毎年クリスマスはココで会いたいなぁ〜」 「それ、ええな」 「絶対よ?」 「ああ」 「約束ね♪」 まわりの誰にも気付かれないように、ポケットの中で手を強く握り合い笑顔で囁きあった。 一年前のクリスマス…俺達二人は幸せやった。 あんな出来事さえなければ、きっと今でも… 「光ちゃんのバカッ! バカ…バカ…」 泣きながら俺の胸を叩く未来の声がだんだん小さくなっていく。 力なくズルズルと床に膝を落としていく彼女の体を、この腕で支えてやることもしないで 俺は、俺の足元で泣き続ける未来を、その頭上からただじっと見下ろしていた。 シンと静まり返った部屋の中に、すすり泣く声だけが長く続いて気が狂いそうだ。 「ええ加減にしろやっ!」 そう怒鳴って拳で思いきり壁を殴りつける。 未来がビクッと大きく肩を震わせて俺を見上げた。 彼女の怯えた目が更に俺をいらつかせる。 「もうええ…」 吐き捨てるように言うと未来に背を向けて玄関へと向かい 「もうおしまいやな、俺ら…」 彼女の顔も見ないまま靴の紐を結ぶと、一方的にそう告げて外に出た。 背中でバタンと大きな音を立ててドアが閉まって、それっきり未来とは会っていない。 冷静さを取り戻したときは、酷いことを言ってしまったと少し後悔もした。 けど、相変わらず未来からの連絡がないことに俺は内心ホッとしていた。 本当のことを確かめるのが怖かったんや。 それから随分過ぎた頃、彼女の友人から、全てが俺の誤解だったことを告げられた。 そして傷心の彼女を救った奴のことも… 今更何を言ってももう遅い… 二人の思い出は遠い記憶の彼方に葬り去るしかない。 クリスマスの日、俺は未来と約束した場所で彼女を待った。 小さなプレゼントをポケットに忍ばせて… 今の俺に出来ることはココで彼女の幸せを祈ることだけ… 来るはずのない未来を待ちながら、ふと空を見上げると、雪が舞い始めていた。 |
あとがき もうお分かりですね?!そう!Melting Snowです。 最近スランプ気味だったので、文章に何のひねりもありません。背景も雨やし…(^_^;) かなりショボイです。 こんなものアップしていいのかぁ〜?!σ(^◇^;; |