NEWS


たったいま入ったニュースをお伝えします。
今朝早く、首都高速霞ヶ関インター付近で大きな事故が発生したもようです。
本日午前4時30分頃、首都高速霞ヶ関インター付近で、走行中の車が側壁に激突し炎上しました。
事故を起こした車は赤の高級外車フェラーリと見られており、目撃者の話によりますと・・・

ガチャン!!

手にしていたコーヒーカップが滑り落ちて大きな音をたてた。

「う…そっ?!」

その日の朝、未来はいつもと同じ朝を迎え、いつもと同じようにテレビを見ながら朝食を摂っていた。

そこへ突然流れ出したニュース。

未来の目はTV画面に釘付けになってた。

運転者は近くの病院に搬送されましたが、ほぼ即死とみられています。
遺体の損傷が激しいため、まだ身元は分かっておりません。
目撃者の話によりますと、運転していたのは20歳代の男性とみられています。
警察では現在、車のナンバーから身元の確認を急いでいるもようです。
では、事故現場の高橋さん、お願いします。


未来はガタガタと震えはじめていた。

「ま…まさか?!」

TVで見る事故の様子は、生きている人がいるとは思えないような惨状だった。

原型をとどめていないほど大破した赤い車は、まるで大きな鉄の塊のように見えていた。

車は、高級外車で有名なフェラーリ。
車種はF−360ということが分かっています。
え〜、ご覧いただいてもわかるように、車はほとんど原型をとどめていません。
まだ事故の原因などは分かっておりませんが、かなりのスピードが出ていたもようで、ブレーキ痕などからハンドル操作を誤ったのではないかとみられています。
え〜、運転者とみられる男性は・・・


惨状を目の当たりにしたリポーターも興奮気味に伝えていた。

未来はテレビの画面を食い入るように見続けていた。

頭の中では嫌な予感が渦を巻きはじめ、背中はジットリと冷たい汗に覆われていた。

心臓が早鐘のように鳴り続け、呼吸することさえ苦しかった。

「た…確かめなくっちゃ!」

涙がこぼれそうになるのを必死に我慢して、そばにあった携帯電話を手にした。

そして、メモリーの一番上にある『光一』を表示すると、震える手で通話ボタンを押した。

PuPuPuPu・・・

しばらく呼び出し音が続いた後、アナウンスが流れ始めた。

「・・・電源を切っているか、電波の届かないところにいるため・・・」

まるで雷に打たれたように、頭の中が真っ白になった。

「う…そ。なんで?!」

ゴトリと音を立てて、携帯がテーブルの上に落ちた。

「い…いやぁ〜〜っ!!」

未来は、椅子から崩れ落ちるように倒れ、そのまま気を失ってしまった。


























ピンポーン♪

遠くでチャイムの音が聞えたような気がして、未来は薄く目を開いた。

その瞳は光を失ってしまったように虚ろで、焦点が定まらないままに空を彷徨っていた。。

ピンポン♪ピンポン♪ピンポン♪

せわしなく鳴り続けるチャイムに反応することもできないくらい心も身体も憔悴しきっていた。

ドンッ! ドンッ!

チャイムを鳴らし続けていた人物が、痺れを切らしたように、今度はドアを叩き始めた。

「やめて…もぅ…お願いだから…」

未来は両手で耳を塞ぐと、その華奢な身体をいっそう小さく丸めた。

「おいっ!未来!おるんやろ?」

光一の声が聞えた気がした。


そんなはずない…


「お〜い、未来ちゃん。はよ、開けて〜。」

今度は少しおどけたような声がはっきりと聞えた。

「えっ?」

次の瞬間、未来は弾かれたように立ち上がると、玄関に向かって駆け出していた。

恐る恐るドアを開けると、そこには光一が少しむくれた顔で立っていた。

「なんや。やっぱりおったんや。そんならはよ開け・・・」

光一が言い終わらないうちに未来は大声で泣き出していた。

「…な?ん?・・・何かあったんか?」









「ほらっ。」

やっと泣き止んだ未来にティッシュの箱を渡した。

「ひっく。…ありがと。」

未来は光一からティッシュを受け取ると、泣きながら笑って鼻をかんだ。

「おまえ…色気ないな〜ほんま。男の前で鼻かむなや。」

「だって…しょうがないじゃない。」

「・・・ほんまに俺が…死んだと思ったわけ?」

「う…ん。」

「ほんまもんのアホや…。」

「なによ〜。ホントに心配…したんだから。
光ちゃんの、ばか…」

光一は、また泣きそうになっている未来の肩をそっと抱いて言った。



「未来をおいたまま、先に死んだりせぇへんよ…俺は絶対。」



「えっ?」

「何でもない…」

「聞えなかった。も一回言ってよ。」

「アホ!二度と言うか…」

「光ちゃ〜ん、お・ね・が・い♪」

「う…うるさい!」

「・・・」

いつまでもしゃべり続ける未来の唇を光一が静かに塞いだ。





あとがき

少し前に報道されたニュースです。TVに映し出された事故現場にグチャグチャになった赤いフェラーリがありました。
事故に遭われたのは20代の男性会社員でしたが、その瞬間、私の背中に冷たい汗が流れました。
光ちゃんが事故に遭うなんて…考えたくないけど、絶対にないとも言い切れない…そんな思いが頭をよぎりました。
愛しい人を失う絶望感と悲しみ…表現できているのか?←正直かなり不安(ーー;) なので、そのあとのイチャイチャで誤魔化してます。ハハハ
光ちゃん、事故だけはホントに気をつけてね。



[PR]動画