初めて彼女を見た瞬間…

なんでやろ?

俺の胸の中に懐かしい感情が湧き上がってきた。










遠い記憶










いつもやったら…

コンサート会場で、ファンの顔をまともに見るなんて絶対ないはずやった。

そりゃ、客席は見るで?!

けど、その中の誰かと目が合うなんてことは、まずありえへん。





彼女を見つけた瞬間、俺はもうそこから目が離せんかった。

東京ドームのアリーナやで? 信じられんへんやろ?

ステージの上から、なぜ彼女を見つけることができたのか…今でも不思議やと思う。

やからその時は単純に、あれ?前に会ったことがあるんか?知っとる人?

そう思って、必死に記憶の糸を辿ったんや。

忘れっぽい俺のことやから、その可能性は十分あったし(笑)

その日はステージからも、クレーンの上からも、どこにいたって俺の目に飛び込むのは彼女だけやった。

コンサートの間中、気になって気になってしゃあなかった。



けど、そんなに気になってた彼女のことも、コンサートが終わってしまえばすっかり忘れとった。

相変わらずの忘れっぽさや(笑)

まぁ仕方ないねん。

ひとつのステージを消化したら、また次のステージ…それが終わってもまだ次がある。

ちょっと気になったくらいのこと、いちいち覚えてなんかいられへんもん。

明日はいよいよラストや。





あ…



俺の目はまたしても彼女を見つけ出した。

それも今度はスタンド席や。

客席なんて真っ暗で、スタンドなんか照明が当っても見えへんのに…

やのに彼女だけ…彼女だけはその表情さえもハッキリと目に飛び込んでくるんや。

なんやねん一体…その時、俺は軽くパニックになってたかもしれへん。

二階スタンドにいる彼女から目が離せないまま…ステージの上に作られた階段を歌いながら降りる。

そして…俺はその足を踏み外した。

カッコわる…





けど…けどな…

その瞬間に思い出したんや、何もかも…

遠い遠い昔…

どのくらい前か、もう思いだせへんくらい昔の記憶が蘇った。

そう…今の俺じゃない、過去の俺…

信じられんと思ってたけど、やっぱあるんや…



その時まで、運命や前世と言われるものを俺は信じてなかった。

輪廻転生…

人は死んだあとも、その魂は永遠に形を変えて生き続けるということ





こうして俺らは何世紀もの時を越えて再び出逢った。






あとがき

語りべ光ちゃんです。
会報で「剛に目配せしてて落ちた」と言ってた光ちゃんですが、真実はこんなところに?!です。
光ちゃんらしい標準語と関西弁の混じった独白にしたつもりですが、う〜んやっぱエセ関西弁?!(苦笑)


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