時には見つめ合って…

あなたの瞳に映るのは私

私の瞳に映るのはあなた

一番近い場所で見つめたいのに…
いじわる…
「ふぅ…」

TV画面にエンドロールが流れ始めると、緊張の解けた私達は揃ってソファに体を預ける。

映画の余韻に浸ったままでそっと光一の肩に頭を預けて目を閉じると、グラスに残った氷がカランと音を立てて崩れた。

小さな音が静けさを取り戻した部屋の中でやけに響く。



「未来…」

ふいに名前を呼ばれた。

「うん?」

頭を預けたまま小さく返事をして ほんの少しだけ彼の方に顔を向けると、一瞬だけ交差する瞳に胸がキュンと鳴る。

彼は少し照れたように視線を外すと、私のくちびるをみつめて手のひらで頬に優しく触れる。

あ…

私の心臓が大きな音を立て始める。

でも今日はいつもと違うよ、私。

いいよね?光ちゃん…お願い



「なっ?!」

彼は、彼のくちびるが私に一瞬だけ触れるとすぐに離れて、驚いたような顔を私に向けた。

ふふっ…光ちゃんたらビックリしてる。

両手を背中にそっとまわすと、胸のドキドキを隠して冷静なふりで言ってみる。

「どうしたの?」

「なんで、目…瞑らへんの?」

目を見開いたまま私を見つめる彼の声は、心なしか上ずっているみたい。

神様お願い…心臓の鼓動が光ちゃんに聞えませんように…私にほんの少しの勇気を下さい。

そう願いながら小さな声で答える。

「光ちゃんがどんな顔でキスしてるのか、見てたい…」

「え…っ?!」

やっぱりね、光ちゃんたら絶句してるし…(笑)

本当はね、一番近くにいる光ちゃんの瞳を見逃したくないんだよ。

私、絶対損してると思うんだ。

多分…一番素敵なはずの光ちゃんの瞳を みすみす見逃してるなんて、ね。

あはっ、光ちゃんったら焦ってるよ やっぱダメ…かな?

女の子がこんなこと言っちゃ嫌われちゃうかもね。

「…ええよ。」

「えっ?!」

思いがけず真剣な眼差しで答えられて、今度は私の方が絶句しちゃった。

心臓がさっきよりも大きな音を立ててドクンと鳴ったよ。

「いいの?」

「あぁ…」

小さく頷いてまっすぐに私を見る優しい瞳…

その瞳の奥にちょっぴりの意地悪が隠されていたなんて…その時は気づかなかった。



「ええか?ほんまに目瞑るんやないで?!」

急に強気になった彼の言葉に一瞬浮かぶ疑問符。

「えっ?…うん」

ソファの上に横たえられた私の頭上から 彼の少し茶色がかった瞳が優しく見下ろしている。

ただ目と目を見つめ合うだけなのに こんなにも呼吸が苦しいのはなぜ?

そして 見つめ合ったまま 少しずつお互いの距離が短くなっていく。

「目を逸らすんやない」

恥ずかしさにほんの少しだけ視線を逸らした途端 彼の声が飛んだ。

その声にビクッと体が震えて、もう一度恐る恐る光一の目を覗き込む。

けれど彼の瞳は変わらず優しくて…ほんの少し微笑んでいるみたい。

「未来…俺を見て」

そう言って光一は私のくちびるに静かに影を落とした。

見つめあったままで…一度目はやさしく軽く触れるだけのKissを

次は何度も角度を変えながら深く長く…光一の目が妖しく濡れながら私を見下ろしている。

今までに味わったことのない心地よい感覚が次第に私を包みはじめていた。

「…ん


我慢できずにギュッと目を瞑って声にならない声をあげる。

彼はようやくくちびるを離して笑った。

「あかんやん…未来。…くっくっ、俺の勝ちやな。」

「い、いじわるっ!光ちゃんのバカっ!」

「ふ
ふん。悪いけどやめへんで。おまえのせいや…

「・・・」

そして私達はもう一度見つめ合ったままでKissをした。



あなたの瞳に私が映ってる…

私の瞳にはあなたが映ってるはず…

私…今とても幸せだよ

たまにはこんなKissもいいかもね♪







あとがき

はい。仕掛けた未来が、逆に光ちゃんに仕返しされちゃいました。やっぱり光ちゃんの方が一枚上手ってことでしょうか?
目を見つめあったままのKiss…予想以上に気分が高揚します。どうぞ一度お試しあれ!ん?既にご存知で?
なに言ってんだか…まったく(^_^;)


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