クリスマスはいっしょに…


「ごめん。やっぱ今日は無理やわ…」

「そう…仕方ないよ。私のことは気にしないで。」

「この埋め合わせは今度…あっ! ほな、またな。」

プープープー

「あ〜ぁ、切れちゃった。」




「おやおや光一さん、こんなところでコソコソとどこへお電話ですかぁ?」

視線を感じて慌てて携帯を切った光一に、剛が笑いながら話掛けてきた。

「なんや、おまえか…ビックリさせんなや。」

「なんやはないやろ〜。何?未来ちゃんか?」

「あぁ…」

「今日、約束してたん?」

「約束はしてへんけど、時間があったら行くって…」

「行ったらええやん。今日はクリスマスイブやで。行ったりぃな。」

「えぇ?そやかて無理やろ、この状況じゃ…」

光一と剛は、レギュラー番組の撮影後、いつものメンバーと打ち上げ兼クリスマスパーティの真っ最中だった。

こうしている間もメンバーのいるテーブル付近から大きな笑い声が聞こえている。

「今日はいつもにも増して盛り上がっとるよな〜。」

まだまだ帰れそうな雰囲気ではなく、このままいけば二次会になだれ込むことになりそうな気配さえしている。

「おぉ〜い!光一!剛!  あいつら二人してどこ行った?」

「あちゃ〜トムさんが呼んでるわ。戻らな…」

「ちょっ…待ち!」

急いで戻ろうとした光一の腕を掴んで剛が耳打ちした。

「俺にまかしとき!」

「?」

「ほらっ、ボケッとしとらんと。俺は先に戻るから、おまえはもうちょっとしてから戻ってくるんや。ええな?」

「あ…あぁ。」

一体どうするんや?剛のヤツ




剛に言われたように少し時間をおいてから光一は席へと戻って行った。

「おい…光一。大丈夫か?」

「はぁ?」

席に着くなり、高見沢が心配そうに声を掛けてきたので、光一は訳が分からず隣にいる剛の方を見た。

「やっぱ帰った方がええで、光一。顔色も悪いわ。」

小さく目で合図を送りながら剛が言った。

「あ? …あぁ、そうさせてもらおうかな?」

どうやら剛がうまく策を運んでくれているようだと分かった。

「ほな、ちょっとタクシー拾って乗せてきますわ。」

剛が光一を促して立ち上がると

「無理しないでね。」

由美が声を掛けてきた。

「あ…はい。すんません。じゃ、みなさんお先に失礼します。」

「お〜気をつけろよ。」

メンバーの心配顔が気にはなったが、適当に話を合わせて出口まで来た時、剛に聞いた。

「なぁ、どうなってんねん?帰れるのはええけど、なんやみんな心配してたで?」

「ええやん、なんでも。」

剛はニヤニヤ笑って答えた。

「おまえ、みんなに何て言うたん?」

「くっくっく…。光一は腹具合悪いらしい…て言うただけや。」

「おまえな〜」

「ええやん。ほらっ、未来ちゃん待ってんで。はよ行けや。 …くっくっく」

光一をタクシーに押し込みながら、剛はまだ笑っていた。

そして、苦笑いしながら後部座席に座った光一の膝に、小さな箱を載せて言った。

「これ、持って行きや。」

「なんこれ?」

「評判ええんやて、この店のケーキ。未来ちゃんにな。」

「…いつの間に。…おまえ、ほんま気ぃ利くな〜。感心するわ。」

「アハハ。光一が鈍いだけやって!」

「ほな行ってくるわ。ありがとな。」

「お〜!明日、遅刻すんなよ(笑)」









「あ〜ぁ、やっぱり今年も無理だったな…」

未来は光一と過ごすクリスマスイブがふいになって、小さな溜息をついた。

時計を見ると、既に12時を廻っていて、もうクリスマス当日になっていることに気付き苦笑した。

「仕方ない。明日も仕事だし、今日は早く寝ちゃおうっと!」

テーブルの上にワイングラスと小さな包みを残したままリビングの明かりを消し、ベッドへもぐり込んだ。






ピンポーン♪






どのくらい眠っただろう?

ふいにチャイムの鳴る音が聞こえたような気がして、耳を澄ましてみたが部屋の中はシンと静まり返っていた。

「ん?気のせい?」

もう一度眠りに入ろうと思った瞬間、今度ははっきりと聞えた。

ピンポーン♪

「やっぱり鳴ってる。 誰?こんな真夜中に…」

ベッドから抜け出すと、真っ暗なリビングのインターホンを手にとって、少し警戒しながら答えた。

「…はい。」

「…俺や。」

小さくひそめられた声ではっきり聞き取れない。

「え?」

「…光一や。寒い…はよ開けて」

光ちゃん?なんでぇ〜?

「ええから…、はよ開けて。」

「チョ、チョット待ってね。」

ドアの外で光一は、未来が玄関に向かってバタバタと走ってくる大きな足音を聞いて苦笑した。



ガチャッ!!



おもてに笑って立っている光一の姿を見て、未来が大きな声をあげた。

「光ちゃん!今日は無理だって…」

「しっ!真夜中やで…」

光一は大慌てで未来の口元を押さえながら笑うと、玄関の扉を後ろ手でそっと閉めた。

そして冷え切った体のままで、パジャマ姿の未来をそっと抱きしめて言った。

「メリークリスマス!未来。」

「メリークリスマス!光ちゃん。来てくれてありがとう。」

「外、めっちゃ寒かったで。」

「うん。光ちゃんの体…冷たい。」

「そやろ?…やから、はよあっためて。」

「もう、光ちゃんったら…」

未来が照れて光一の胸をコツンと叩く。

光一は、未来のそんな小さなしぐさ一つさえも愛しくて、抱きしめる腕に力を込めた。

「苦しいよ…光ちゃん。」

微笑みながら見上げた未来の額に、光一は優しくそっと唇を落とした。













「な〜いつまで笑ろてるん?」

翌朝、朝食を摂りながら、光一は半ば呆れたような顔で聞いた。

「だってぇ〜。可笑しいんだもんっ!!くっくっく…きゃはは。」

光一が未来の元にやって来れた訳を聞かされた未来はお腹をかかえて笑い出していた。

穏やかな朝日が差し込むテーブルで、ケラケラと笑い続ける未来の笑顔…

光一はいつまでもその笑顔を見つめていたいと思った。



初めて迎えた幸せなクリスマスの朝に…






あとがき

剛さんの計らいで、初めて一緒にクリスマスの朝を迎えた二人。
感謝しなければならないはずなのに、何だか笑ぃ話になってしまったのは剛さんのいたずら心のせいかしら?(笑)
王子の腹具合が悪いって…ねぇ?(* ̄m ̄)プッ
「光一はええ思いしてんやから、そのくらい許したってや(笑) ケーキのお土産持たしたったやんか〜」By剛
…そう、剛さんが持たしてあげたケーキ、その後お話に登場することなく、さっさと未来のお腹に消えちゃいました(苦笑)ByMic




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